
- 歩いてると足が痛い・しびれる
- 長時間歩けない
- 腰を反らせると症状が強くなる
- 病院で手術を勧められた
- 寝起きに足がしびれている
すべり症とは?
〜背骨の「柱」がズレて、体がグラグラし始める状態〜
私たちの背骨は、いわば「身体を支える柱の束」。
その一つひとつの骨(椎体)は、クッションの役割をする椎間板や、関節、靭帯などのサポートでバランスよく積み重なっています。
でも、このバランスが崩れてしまうと――
柱の一部がズルッと前に滑ってしまうことがあります。
これが「すべり症(腰椎すべり症)」です。
◆背骨がすべるってどういうこと?
例えるなら、きれいに積み上がったジェンガの真ん中あたりのブロックが前にズレてしまったようなもの。バランスは一気に崩れ、まわりのブロックもぐらつきますよね?
人の体も同じで、一か所がズレると全体がバランスをとろうとして、他の部分にも負担がかかってくるんです。このズレた部分の近くには、脊髄から伸びた「神経」が通っています。
ズレによってこの神経が圧迫されたり、引っ張られたりすると――
- 腰が重だるく痛む
- 足にピリピリとしびれが出る
- 長く立っていられない
- 歩くとしんどくなる
そんな症状が出てくるようになります。
すべり症の種類は2つあります。
▶① 変性すべり症(中高年の女性に多い)
長年の姿勢のクセや加齢によって、
背骨のクッション(椎間板)がつぶれて、骨と骨の関節もゆるくなってきます。
その結果、椎体が前に滑ってしまう。
多くは第4腰椎で起こり、脊柱管狭窄症を併発しやすいのが特徴です。
▶② 分離すべり症(10代~40代の男性に多い)
学生時代にスポーツを頑張っていた方に多いです。
ジャンプや反る動作を繰り返すことで、背骨の一部(椎弓)が疲労骨折し、骨が前後に分離してしまう。
この状態で大人になり、時間とともに椎体が滑ってくるのが「分離すべり症」。
特に第5腰椎に多く見られます。
神経症状が出るのはなぜ?
背骨のズレは、家で言うなら「柱が少し前に傾いた」ような状態。
すると、柱にくっついていた電気の配線(=神経)が引っ張られたり、押しつぶされたりします。
神経はとっても繊細です。
ちょっと押されただけでもピリッと痛みが出たり、力が入りにくくなったりすることがあります。
特に神経は長時間の圧迫や動きによるこすれ・熱に弱く、
- 歩いているとしびれが出てくる
- 同じ姿勢でいると痛みが増してくる
- だけど休むとまた歩ける
という「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という状態につながっていきます。
じゃあ、すべり症って治るの?
結論から言えば、「治すというより、安定させる・コントロールすることが大事」な病気です。
すべり症は、多くの場合、体の使い方や土台(骨盤や足部)を整えることで、症状の改善が可能です。
渋滞した背骨をスムーズに動かすには?
まるでグラグラの橋の上を、毎日何百台もの車(=体の動き)が通っているようなもの。
橋脚が弱ければ、いつか壊れてしまうかもしれません。
そこで私たちが行うのが、以下のような“身体の工事”です。
① 骨盤・足元のゆがみを整える
ズレた背骨の「土台」が歪んでいては、再びズレてしまいます。
骨盤や足部(距骨など)の調整で、支えを安定させます。
② インナーマッスルを鍛える
橋脚を補強するように、腹横筋・多裂筋・骨盤底筋などの体幹深層筋を活性化。
背骨を正しい位置に保つ力が強まります。
③ 姿勢の改善・日常動作の見直し
「立ちっぱなし」「反り腰」「長時間の座位」など、すべりを助長する姿勢を修正。
腰に負担の少ない日常動作を再教育します。
④ 神経リリース
ズレた椎体周囲で「神経が滑らなくなる」状態を改善するため、
徒手的なモビライゼーションやストレッチ、微弱電流治療で、神経の環境を整えます。
それでも改善しないときは?
日常生活もままならないほどの強い痛みや、
安静にしていてもしびれ・脱力が続くような場合は、手術での固定・減圧が選択されることもあります。
金属スクリューでズレを固定したり、圧迫部分を削ったりして、神経の通り道を確保する方法です。
ただし、これはあくまで最終手段です。
すべり症との向き合い方
すべり症は、「治らない病気」ではありません。
「歳だから」「姿勢のクセだから」とあきらめる必要はまったくありません。
実際に、
「もう立ち仕事を続けられないと思っていた方が、今ではジムに通っている」
「歩けなかった距離を、家族と散歩できるようになった」
という方もたくさんいらっしゃいます。
大切なのは、“支える力を取り戻すこと”。
整えて、鍛えて、守っていく。
それが、すべり症と長くうまく付き合っていく秘訣です。あなたの「柱」を、もう一度しっかり立て直すお手伝いをします。お気軽にご相談ください。